ニーズを見据えたゆとりある空間構成

桐生グランドホテル
代表取締役社長 吉田初 様、常務取締役 吉田政人 様

株式会社石井アーキテクトパートナーズ
取締役 執行役員 統括 須田哲司

Data

  • 竣工年月:2011年10月
  • 所在地:群馬県桐生市相生町
  • 用途:ホテル
  • 敷地面積:9,232m2
  • 延床面積:2,775m2
  • 階数:地上4階・地下0階
  • 構造:S造

石井設計とのつながり

社長
当時、桐生は旅館がたくさんあったんですが、こういった洋館の建物はうちが初めて出来たんです、昭和47年に。
実はその旧館を石井設計さんにお願しておりまして。
今回の計画はまだおぼろげな状態だったのですが、私が群馬県の旅館ホテル組合の副理事長をやってるんですが、定例の会議というのがありまして、その時にとりあえず石井設計さんを訪ねてみようと思い立って、何の連絡もなしにいきなり帰りに寄ってみたんです。
その時に偶然お会いしたのが須田さんです。
石井設計さんはホテル関係をはじめ色々と手がけられているのは知っていましたし、こちらからの一方通行ですけどね。それに対する考え方に応じてくれたっていうのが始まりです。

桐生というのは、現在駅周辺は賑やかですが、地場のホテルはだんだん無くなっていく。
昔の組合規制も全部撤廃されて自由競争になって、駅周辺にビジネスホテルが集約されています。
うちはどちらかというと団体、小グループが多い。
まあ、みんなファミリー、個人客に対象にシフトを変えてるわけですが、施設も以前はあったんですけど、なくなったっていうのもありまして。
その辺のことも踏まえると市場的にも立地的にもなんとかなるんじゃないかという。


  • ラウンジ
    大きなガラス面から光が降りそそぐ開放的な空間。


  • ガーデン
    ガーデンに面するテラスでは食事も楽しめる。

着工直後現場を襲った震災の影響

須田
今回大きかったのはやっぱり震災ですよね。着工してまもなくだったしあれはとてもショックだった。
果たして工期的にどうかと、ほんとに難しい判断にはなりましたけどね。
社長
工事が2月3日に着工されて、すぐ1カ月後に震災が起きたわけですからね。
その後もオープンまでずーっと打撃を、大きな打撃を受けました。
須田
社長にとってはお客様の流れですよね。全国的にもう止まっちゃったわけですから。
あと、建築で言えば資材手配が厳しいものも出てきました。例えば空調機とかいうのは、やはり比較的厳しかったですよ。
住宅で言えばキッチンとかそういう関係がほんとに来なくなった。構造の面では鉄骨も。だから構造的な見直しをして一部変更しました。
それでもほぼ予定通りですよね。

常務
そうですね。そういう意味じゃ、専門的なことはわからないんですが、コストとかそういう面も調整をスピーディーに切り替えていただいたんで。
社長とよく話してたのは、もし設計会社の規模が小規模だったりとか、石井設計さんじゃないところだったらそんな風にはいかなかったんじゃないかなというのは感じるところですよね。
須田
うちは建築・構造・設備って全スタッフ持ってますから。その都度すぐに対応っていう形も検討出来ます。
極端な話、建築事務所っていう形取ってるけど、構造・設備は外注っていうのは多いですからね。
そうするとフットワークの面で問題出ますよね。
そういう面ではね、そういう形での協力は出来たと思います。

設計におけるアドバンテージ

須田
こちらは住宅街にあるので、面積的な規制が結構厳しかった。あと一番厳しかったのはコストですね。
ただ、やっぱり我々はコスト以上の物を提供する立場にありますから。
その中で掛けるところと掛けなくても済むところを明確にする。
でもトータル的にはきれいにまとまったと思います。
あとはゼネコンさんも頑張ってくれました。それは本当に感謝してます。
常々思ってるのは3社が一体になればいいものが出来ますよ。
常務さんにもすごく真剣に取り組んでいただいたし。
常務
色々無理な要望を聞いていただいて、なかなかこんな機会はないので本当に勉強になりました。
使い方を限定しない空間の提案をしていただきましたので、お客様の状況に応じて臨機応変に対応できる事が非常に助かります。
実際ここは朝食会場とか喫茶とか、ラウンジで夜も使えます。夏は庭のビアガーデンからそのまま延長線上で使える空間なんですね。
バリエーションが持てるというのは、売れる可能性が高くなるわけですから。
ほんとにバランス的にもベストに近い客室の構成だったと思います。

須田
あと新築の場所があったから、旧館を営業しながら進められたのは良かったですね。
極端に言えば、休みなしの切り替えが出来たわけです。
今までは道路に面して建物が建ってましたから、建物が塞いじゃう感じでこの庭がよく見えなかったんですよ。
社長
だから大きい都市だと、目の前が通りですぐにエントランスがある。
今回これだけアプローチをとれると、どちらかと言えばリゾートなんていう風にかっこよく言いたくなりますね(笑)。
お客様から、静かで寝すぎたなんて言われました。
この庭は夏になると緑に覆われるので、楽しみですね。
ラウンジはフルオープンになって、庭と一体の広く出来るようなかたちになりますから。
今までも部分的な改修はしていましたが、今回のような新築はお客様へのインパクトはとても大きかったと思います。

  • コンベンションホール
    多目的に使えるスペース。別棟の宴会場、ガーデンを含めると、非常にバリエーション豊富な使い方が可能。


  • 大浴場
    お客様にとても好評なコンパクトながら充分な広さの大浴場。


  • 客室
    通常よりも広さを感じる客室。見晴らしの良さも魅力。